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八ヶ岳 石尊稜、中山尾根

2003年3月15日〜16日 参加者 2名

15日 天候 雪

コースタイム
美濃戸P(6:30)―赤岳鉱泉(9:30)―石尊稜取り付き(11:00)―稜線(17:45)―地蔵頭(18:30)―行者小屋(19:30):C1

16日 天候 快晴

コースタイム
C1(5:50)―中山尾根取り付き(6:50)―稜線(10: 20〜40)―行者小屋(11:40)―美濃戸P(14:20)

ルポ

当初、戸隠に行く予定であったがラッセルが辛そうなので、ラッセルのなさそうな八ヶ岳西面に変更した。  
ルートは、来冬の一〇周年山行(後立縦走)の岩稜トレーニングとして、石尊稜と中山尾根を選んだ。
八ヶ岳西面は賑やかで、岩場では他パーティを待ったり、待たしたりすることがあったが、全体的にスケールが小さく、ゲレンデみたいだなと思った。
 
三月一五日(雪夕方晴れ)
美濃戸PでC0。林道には鎖が張ってあり、車は入れないようになっていた。車で仮眠後、凍った雪道を美濃戸山荘へ。赤岳鉱泉に着く頃には雪は本降りになってきたが、風はなく気温も高め。予定通り全装備を持って石尊稜へ向かう。取り付き11時。先行は4人パーティが1組いたが、これがザイルワークも登るのも恐ろしく遅い。おまけにザイルをうまく使って効率よく登ろうという工夫もない。1時間近く待たされ、あまりに遅いので左側から取り付いてみたが、上部が細かく、ピンもないのでやめて正規のルートから登る。出だしの数メートル、スノーシャワーがひっきりなしに落ちてくる中、重荷を背負ってけっこう怖い思いをした。石尊稜は簡単だと聞いていたので、先行きが心配になる。20mくらい登ると立派なビレイポイントがあり、2ピッチめからは大分易しくなる。4人パーティは時間切れということで懸垂で降りていった。この先はザイル不要だが、新雪が積もって何となくアイゼンが効きにくい急斜面をブッシュ頼りに登っていく。トレースも消えてラッセルとなり、さらにペースが落ちる。まあ今晩は風も無さそうだし、どこでも泊まれるだろうと、時間を気にせず先に進む。
 この先はトレースがなく、ラッセルを続けながら雪稜を登っていくと上部岩壁に出る。簡単な岩場を登っていると急にガスが晴れ、目と鼻の先に稜線が見えた。天気は段々悪くなると思っていただけに少々驚く。西の空に夕日が沈む頃、稜線に出る。時間を見ると17時45分で、歩いたことのない横岳の稜線は何とか明るいうちに抜けられそうだ。岩場の下降、雪崩れそうなルンゼのトラバースなど、結構スリリングな稜線を地蔵の頭まで行き、ここでヘッドランプを出す。幸い空には満月が出て、けっこう明るい。地蔵尾根上部ではトレースが消えていて、左の尾根に引っ張り込まれ、しばらく右往左往したが、何とか下降路を見つけてようやく行者小屋に着き、テントを張る。


三月一六日(快晴)
昨日遅かったので、暗いうちに出ようという計画はやめ、普通に出発。中山峠から右に入るとちょうど1パーティ分のトレース。下部岩壁の下に着くと、二人パーティのトップが登り始めるところだった、天気はいいし、先行がいるからルートは分かるし、最高のコンディションである。1ピッチめは出だしが少し思いっきりがいるが、あとは難しいところはなく20mくらい登ってテラスへ。吉田さんのすぐ後ろに後続パーティのトップがピタッとくっついて登ってくる。2ピッチめは凹角状の所がやや難しく、ピンが多いので何とか登れたが、無かったら怖そうな所だ。その上の雪稜はコンテで行き、上部岩壁では速そうな後ろのパーティに先に行ってもらう。上部岩壁は核心部と書いてあったので緊張したが、右の凹角から上部のチムニー状の所はピンも多く、問題なく抜けることができた。ここでも後続のトップ(ガイドのようだ)がピタッと吉田さんの後についていて、特に遅いわけでもないのに、実にイヤなヤツだ。滑ったふりしてヘルメットに蹴りでも喰らわせてやったら良かったのに、と吉田さんに話す。その上はもう特に難しいところもないが、最終ピッチの途中で後ろを振り返るとオーバー手袋が岩の上に落ちている。そう、懐に入れたのが落ちたのに気がつかなかったのだが、幸い風にも飛ばされず、吉田さんが当然持ってきてくれるだろうと思っていたら、登ってきた吉田さんは誰かが忘れていったと思い、そのまま置いてきた、と言う。え〜、信じられないと思ったが、申し訳ないけれどクライムダウンして取ってきてもらった。このピッチの終了点から横に20mくらいトラバースすると昨日歩いた稜線に飛び出す。中山尾根は石尊稜より格段に難しいと聞いていたので、あまりのあっけなさに拍子抜けしたが、まあ条件が良かったに違いない。「やったね!」と握手して、日だまりでしばしひなたぼっこ。
正面には阿弥陀が大きく見え、吉田さんにどこで雪崩にあったのか教えてもらうが、こちらからだと急で、見るからに雪崩れそうな斜面だ。
地蔵尾根を下ってテントに戻るとまだ昼前。天気が良くて春のようだ。そのまま撤収して美濃戸に向かうが、里には春の気配が漂っていた。帰りの道すがら、この辺りは人が多いし、ルートは短いし、岩は多いし、あまり私向きではなさそう。今度はまた静かな東面に行きたいと思った。
(松田 記)